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今シーズン2勝目を飾った宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)
スポーツランドSUGOを舞台にして行われた2023全日本スーパーフォーミュラ選手権 第5戦。例年は“SUGOの魔物”が猛威を振るって大荒れのレースになるのだが、今回はスタート直後にセーフティカーが出たものの、全体的に落ち着いた展開で、ドライバーとチームの実力勝負となる1戦となった。
そのレースを制したのは2番グリッドからスタートした宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)だった。14周目に大湯都史樹(TGM GrandPrix)を抜いてトップに立つと、いつもとは異なり早めにタイヤ交換を済ませる戦略をとり。野尻智紀(TEAM MUGEN)や牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)など、アンダーカットを狙う車両を抑え込んだ。機転の効いた判断で実質トップの座を死守すると、後半は1分08秒~1分09秒前半のペースで周回し、最終的には2位の野尻に対して22秒もの大差をつける独走劇を披露し、今シーズン2勝目を飾った。
この走りに舘信秀監督も「今週はフリープラクティスから流れが良くて、その流れを今日に持ち込んでくれました。本当に完璧でしたね」と満面の笑みを見せていた。
舘信秀監督(左)と宮田莉朋(右)
今シーズンは各レースで上位に食い込み、初優勝を飾った第3戦鈴鹿以降は全てトップ争いに絡む走りをみせている宮田。今年から車両がSF23に変わったのだが、それ確実にモノにしている印象がある。
改めて、本人に話を聞くと、手応えが見え始めたのは第2戦富士からだったという。
「富士の第2戦からです。結果はダメでしたけど、自分のなかで悩んでいたものをトライしたことが、内容として『これないけるな』という手応えを掴みました」
「そもそもSF23でテストが少なかったので、今後のためにも『これをやってみたい』ということを自分からリクエストして、小枝エンジニアも『やってみるか』ということで、新しいことを試したのが第2戦でした」(宮田)
第1戦ではストレートスピードは伸びるものの、ダウンフォース面で課題が残った宮田。その対策とは別の部分なようだが、これまでの経験を信じて自ら提案したことが、今の好調さにつながっていることは間違いない。
「第1戦で見えた課題とは別のことをやっていて、第2戦ではリザルトという部分では残らなかったのですが、第2戦の41周を戦った内容としては、得られたものが大きくて『これで他のサーキットで通用するなら、いけるな』という手応えを得ました。それが、鈴鹿で優勝できて、オートポリスでも良い結果につながりました。第2戦で見つかったものが、活きている感じです」(宮田)
宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)
今回のSUGOではパルクフェルメでの公式映像やインタビューや表彰式での表情を見ても、初優勝の時とは違って堂々とした印象があった。宮田が駆る37号車を担当する小枝正樹エンジニアも、多くは語らならいが明らかに手応えを掴んでいる様子がある。
これまでは、各チームがTEAM MUGENをターゲットにして、安定した強さをみせている2人のドライバーに近づく方法を探っていたのだが、2023シーズン前半を振り返ると、すっかり勢力図が変わった。
特に第5戦SUGOでの結果を踏まえ、一番危機感を感じている様子だったのが、他でもないチャンピオンチームだった。
野尻は肺気胸の診断を受け、第4戦オートポリスを欠場。体調を少しでも万全な状態に戻すため、第5戦SUGOまでの間は、トレーニングを控え、日常生活でもゆっくり歩くことを心がけるほどだった。苦戦が強いられそうな状況下だったが、予選で3番手を獲得し、決勝ではスタートでの失速から挽回し2位を獲得。復帰戦ということを考えると上出来な内容に思えた。
復帰戦で2位と実力をみせた野尻智紀(TEAM MUGEN)
しかし、SFgoで公開されているチームラジオを聴くと、1号車陣営ではレース後にこんな交信をしていた。
「(宮田とは)最後20秒まで離されてしまったから、これは次への宿題にします」(一瀬俊浩エンジニア)
「前回のレースを外で見ていて思ったけど、莉朋くんだけ全然(クルマの動きが)違うからね。どうにか捕まえないと……がんばりましょう」(野尻)
一方、ルーキーイヤーながら2勝を挙げる活躍を見せているチームメイトのリアム・ローソンだが、速さはありながらも、宮田を意識した戦略が裏目に出る形となってしまい、最終的に5位でフィニッシュ。今シーズン初めて「悔しい」と感情を露わにしていた。
リアム・ローソン(TEAM MUGEN)
戦略面に関しては、15号車担当の小池智彦エンジニアも「自分の判断ミス」とコメントしたが、それでも宮田を上回るにはパフォーマンスアップが喫緊の課題であることも認めていた。
「そもそも論で言うと、予選で前にいけないというのが一番の課題です。それで戦略の幅も決まってしまいます。(レース中に)何かアクションをしても、向こうにすぐ対応されてしまうし、主導権を握れないですからね。Q1はそこそこ行けるんですけど、Q2で上げていくのが難しいので、(シーズン中に行われる富士テストでは)思い切って、そう言うところにフォーカスしてやってみようかなと思います」(小池エンジニア)
同じく、レースを終えて肩を落としていたのはTEAM MUGENの田中洋克監督。「宮田選手がちょっと抜けているなというのはあるので、そこに対して何か対策を講じないなと……予想よりも遥かに速いなという印象です」と頭を抱えていた。
「野尻も今回は復帰戦で2位というのは凄いのですが、冷静に見るとあの差(22秒)は大きい。1号車に関してはクルマに対して、少しやることが残っているので、そこに期待はしていますけど、果たしてそれだけで(宮田攻略のためのパフォーマンスが)足りるかどうか……」
「リアムは、どんなクルマでも乗りこなしてしまうので、もっと自分のクルマを速くするためのセットアップを作るということを、もっとやっていかないと、宮田選手に追いつけないかなと思います。まだやることはいっぱいあります」(田中監督)
レースを終えて粛々と機材の撤収を進めるTEAM MUGENのスタッフたち。そこには前戦までとは明らかに違った、焦りにも似た雰囲気が感じられた。
第5戦SUGOを終えてのドライバーズランキングは以下の通り。
1位:宮田莉朋(75ポイント)
2位:リアム・ローソン(63ポイント)
3位:野尻智紀(58ポイント)
4位:坪井翔(50ポイント)
まだ、シーズンも残り4戦あるほか、6月23日・24日には富士スピードウェイで公式テストも行われるため、ここから勢力図が変わる可能性も十分に考えられる。
ただ、シーズン序盤から“今年もTEAM MUGENが優勢”という雰囲気があったのだが、SUGO大会を機に流れが変わりつつあるのは確か。チャンピオン争いという観点でいくと、シーズンの行方を左右する“大きな分岐点”になることは間違いないかもしれない。
文:吉田 知弘
吉田 知弘
幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ
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